原料~シルク~
シルク(絹)の歴史
絹は5~6,000年前から人と関わりがありました。絹の発祥は紀元前2,000年頃と言われています。紀元前2,000年頃、中国の妃・西陵が繭から細い糸を繰ることを発見し、次女たちに養蚕・製糸を教えたことが始まりのようです。中国ではその方法を秘密として、絹織物だけ輸出していました。このとき、中国から西方諸国へ絹を運んだ道がシルクロードです。
中国以外で養蚕が始まったのは6世紀頃とされています。西方の修行僧が中国から蚕の卵を持ち帰り、これをユスティニアヌス皇帝に贈ったことが始まりで、こうしてコンスタンチンノーブルを中心に養蚕技術がヨーロッパに広まりました。日本には、弥生時代に朝鮮半島楽浪群を経て伝わったと言われています。日本の蚕糸業が著しく発展したのは明治以降で、当時の輸出総額の半分以上を占めていました。しかし、第二次世界大戦後はアメリカナイロンの大量生産のあおりを受けて、繭の生産量は減少してしまいました。
絹糸には、大きく分類して養蚕による家蚕(かさん=室内で飼育する蚕)と野蚕(やさん=野生の蚕、黄色い強い繭を作る)に分けられます。繭を作る蛾は世界中にたくさんの種類があります。それぞれに大きさや風合いが異なります。
生糸の製糸法
一本の繭糸を横断面を見ると2本のフィブロインをセリシンが囲んだ二層構造になっています。セリシンは熱湯や石けん水に溶ける蛋白質で、家蚕の繭を水に入れボイルすると繭を固めている膠質が溶け、外側の糸がほぐれて浮かんできます。このいくつかの繭からほぐした糸を集めて、糸繰機に取り付け、一本の切れ目のない繊維として巻き取っていきます。セリシンが再び冷え固まり、糸になります。
出来た糸を生糸と呼びます。(一つの繭から800~2,000m) 野蚕、あるいはタッサーの繭は、果実のように絹糸でぶら下がっています。成虫(蛾)は、繭に穴を開けて外に出るため、一本の絹糸は短い糸のようになってしまいます破れた繭は梳いて、毛羽を立て繭綿にされ、一本の糸に紡がれます。断面が扁平なので光沢やしなやかさに劣ります。(家蚕糸より2~3倍太い)
絹(家蚕)は宝石と同じく、光を屈折させるので明るい光の下では光沢が増し、美しく見えます。 これは、フィブロイン繊維が三角形に近い断面と特有の微細構造を織っているため、繊維に光が当たると光が屈折・分光・干渉して和らげるからなのです。
また、絹はしなやかで腰があり、触り心地が良いのはフィブロイン繊維が非常に細く、そしてヤング率が大きいためです。反面、紫外線に弱く黄変することがあります。なぜなら、フィブロインを構成するアミノ酸のうち、チロシンやトリプトファンが紫外線を吸収して着色物質に変化してしまうからです。 取り扱いには注意が必要です。
絹はウールと同じく蛋白質が主成分なので、アルカリ質に弱いのが特徴です。お茶系・ワインなどでシミになりやすいので注意が必要です。湿気に弱いので収納には注意を要します。本来、空気に触れない方が長持ちします。通気性の良い紙などで梱包、保管することをお勧めします。イランでも良質のシルクがラシッド地方で養蚕されています。生糸を使った絨毯は価格も高価ですが紡績糸の絹織物よりも退色・堅牢度も大きく勝っています。
シルクは健康食品としても開発研究されているくらいで、人肌・身体と馴染みが良く、アレルギー体質の方にも安心です。