キリムとは〈遊牧民の絨毯〉
基本的にキリムとは、パイル(毛羽)のない絨毯で綴れ織り(平織り)の織物です。 各地域での呼び方はいろいろで、これらを総称して今は一般的に「キリム」の名で親しまれています。
◆各地域での呼び方
イラン | → | グ(ギ)リム |
アフガニスタン | → | ケリム |
コーカサス | → | バハラ |
シリアやレバノン | → | バサス |
ルーマニア | → | チリム |
インド・パキスタン | → | ダリー |
トルコ・ポーランド・ハンガリーセルビア地方 | → | キリム |
◆遊牧民の敷物
キリムは、もともと遊牧民のテント内に敷物として用いられたり、部屋の間仕切りの壁代わりやドアの代用品、ロバなどの動物の鞍や運搬用の袋に、あるいはイスラム寺院の家の床の敷物として利用されてきました。キリムは長い間、西アジアの人々の生活にはなくてはならない生活必需品として、また、生活に潤いを与える装飾品として活躍してきました。
◆遊牧民の貴重な財産
遊牧民の貴重な財産である羊、山羊、ラクダなどの毛を原材料として、主に彼らの女性たちの優れた技術と多大な労力、時間を掛けて織り上げられたキリムは、その家の富の象徴であり、貴重な財産のひとつでした。
キリムは、彼らの婚礼の際の持参金の一部として、また花嫁の家族に支払われる花嫁代の一部として大きな比重を占めていたといわれています。若い娘が婚約すると、母親や祖母に教えられながら婚礼の日まで美しいキリムを何枚か織り上げ、それが愛の証として、婚礼の日に携え嫁いでいきました。どのキリムにも、その家族や部族に伝授された伝統的な柄や色調があり、そこには部族に言い伝えられた信仰や習慣や伝説までも織り込まれています。
キリムの素材
キリムの原料は主に西アジア一帯に多く産する羊ですが、その他に山羊、ラクダなどやコットンも用いられることもあります。まれに絹使いもあります。
キリムの利用方法
決まりはありませんが、応接間、ダイニング、キッチン、寝室、廊下、玄関ホール、階段などの床敷物としての他に、部屋の間仕切り、カーテン、壁掛け、ソファのカバーアップ、ベッドカバー、屋外の敷物としても・・・工夫次第で多種多様に楽しむことが出来ます。
使い込むことで馴染んでくるのが最大の特徴です。使い込んで柔らかくなったところで鞄に貼り付けたり、バッグに加工したり、ボロボロになった破片を額装してタペストリーにと何度でも楽しめるのがキリムです。