ジム・フォード氏を称えて:その研究と「ペルシャ絨毯の伝統」 2024.07.18 ペルシャ絨毯研究の世界的権威として知られたジム・フォード氏が、最近逝去されました。フォード氏の経歴は輝かしいものでした。1967年にはロンドンに拠点を置く世界的絨毯商社 OCMに入社し、イランでの絨毯買い付けを担当。その後独立し、妻のバーバラ・リンゼイ・フォード氏と共にネパールで絨毯のデザインや制作にも携わりました。また、1981年には『オリエンタル絨毯のデザイン』(Oriental Carpet Design) を執筆し、こちらも絨毯研究のスタンダードとして高い評価を得ています。2013年、氏は退職後に『ペルシャ絨毯の伝統』の執筆に着手します。その内容は15世紀の初期ペルシャ絨毯の断片や、当時の写本、ミニアチュール絵画などおよそ100点におよぶ資料を詳しく調査したものでした。序文では、1494年に描かれたヘラート (現在のアフガニスタン、当時東ペルシャの主要都市) の宮廷を舞台にした絵画を鮮やか に分析。ペルシャ絨毯の「伝統」として知られる中央にメダリオンを有し周囲を花文で飾るデザインが生まれるまさにその直前、それまでの抽象的な文様をもつ絨毯が描かれていることを指摘しました。『ペルシャ絨毯の伝統』は副題にある「六世紀にわたるデザインの変遷」の通り、ハリ出版局らしい美しい図版とともに、中央メダリオンを有する絨毯のデザイン革命を時系列に、また地域ごとに追跡しています。ときに難解になりがちな絨毯研究の世界ですが、フォード氏は専門用語を使いながらも平易な言葉で解説を加え、読者を飽きさせません。絨毯愛好家はもちろんのこと、テキスタイル全般に興味のある方にも必読の書となっています。テキスタイルソサエティオブアメリカ (TSA) は、フォード氏のこの素晴らしい業績を称え、本書を高く評価しています。フォード氏のご冥福をお祈り申し上げます。 R.L. シェプ賞: https://textilesocietyofamerica.org/programs/awards-scholarships/shep https://www.accartbooks.com/us/book/the-persian-carpet-tradition/